アマチュア数学者の日記

とある大学で数学を学んでいます。専門は偏微分方程式です。高校野球、マラソン、カメラ、数学、etc...多趣味です。様々なことを書いていきます。

熱方程式⑩熱方程式のCauchy問題

久しぶりに熱方程式について書きたいと思います。

前回まで、熱方程式の考察の対象として、以下のようなディリクレ問題

(1) \frac{\partial u}{\partial t}(t,x)=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x)

(2)u(t,0)=u(t,1)

(3)u(0,x)=a(x) 

ノイマン問題

(1) \frac{\partial u}{\partial t}(t,x)=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x)

(2) \frac{\partial u}{\partial x}(t,0)= \frac{\partial u}{\partial x}(t,1)=0

(3)u(0,x)=a(x) 

を対象にしていました。

今回は熱方程式の定義域を無限に広げたバージョンについてみていきます。

このような熱方程式のことをCauchy問題といいます。

ちなみにこのCauchyは数学でよく登場するCauchy列のCauchyです。

初めに定義を書いておきます。

 

定義

(1) \frac{\partial u}{\partial t}(t,x)=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x)  (t≧0,x\in R)

(2)u|_{t=0} a(x)   (x\in R)

(1),(2)からuを決定する問題を熱方程式のCauchy問題といいます。

 

このCauchy問題に対しても、最大値の原理が成り立ちます。

また、この最大値の原理より、正値保存性順序保存性が導かれます。

 

定理(Cauchy問題の最大値の原理)

u=(t,x)をの有界な古典解とする。

また、a=a(x)R有界な連続関数とします。

このとき、

\sup_{t≧0,x\in R}u(t,x) =\sup_{x\in R }a(t,x)

\inf_{t≧0,x\in R}u(t,x) =\inf_{x\in R }a(t,x)

が成り立ちます。

証明

εを任意の正の数とします。

補助関数w(t,x)

w(t,x)=u(t,x)-ε(x^2+2t)) -\sup_{x\in R }a(t,x)

とします。

 \frac{\partial w}{\partial t}(t,x)=\frac{\partial u}{\partial t}(t,x)-2ε

 \frac{\partial w}{\partial x}(t,x)=\frac{\partial u}{\partial x}(t,x)-2εx

\frac{\partial^2 w}{\partial x^2}(t,x)=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x) -2ε=\frac{\partial u}{\partial t}(t,x)-2ε =\frac{\partial w}{\partial t}(t,x)

wは熱方程式を満足します。

任意のt_0≧,x_0\in Rに注目し

u(t,x)≦M

となるような正の数Mを取ります。

多少技巧的ですが、

L=( |x_0| + \frac{M+sup |a(t,x)|}{ε})^{\frac{1}{2}}

と定めます。

いま、wQ=[0,t_0]×[-L,L]に制限して考えます。

t=0のとき、

w(0,x)=u(0,x)-εx^2 -sup |a(t,x)|

≦M+sup |a(t,x)| -εx^2≦0

x=±Lのとき、

w(t,x)=u(t,x) -ε(L^2+2t)) -\sup_{x\in R }a(t,x)

≦M+sup |a(t,x)| -ε|x_0|-M-sup |a(t,x)|

-|x_0|≦0

x区間有界である場合の最大値の原理によりQにおいて

w(t,x)≦0

一方、Lの定義により、(t_0,x_0)\in Q

u(t,x)-ε(x^2+2t)) ≦\sup_{x\in R }a(t,x)

t_0≧,x_0\in Rは任意だったので、

\sup_{t≧0,x\in R}u(t,x) ≦\sup_{x\in R }a(t,x)

逆は明らかなので、

\sup_{t≧0,x\in R}u(t,x) =\sup_{x\in R }a(t,x)

以上により最大値の原理が示されました。

最小値についても同様に示すことができます。