アマチュア数学者の日記

とある大学で数学を学んでいます。専門は偏微分方程式です。高校野球、マラソン、カメラ、数学、etc...多趣味です。様々なことを書いていきます。

線型代数①ベクトル空間

こんにちは

今日から線型代数の理論について書いてみます。

線型代数の問題の解答とか学部1年で学ぶ内容の記事は多くのブログで書かれているので、ここでは線型代数の「理論」に絞って書いてみます。理系学部の方なら線型代数は避けては通れない科目ですが、1年の教養で習う程度だと計算法に目が行きがちなように感じます。もちろん計算できることも大事なのですが、数学を突き詰めるうえでは理論をきちんと理解することも大切です。

具体的には、線形空間の理論だったり、線形写像の性質や内積の性質などについて書く予定です。

まず第1回目は、ベクトル空間についてです。ここでいうベクトル空間とは抽象ベクトル空間のことをいいます。

 

定義(ベクトル空間)

集合Vが以下の(Ⅰ)(Ⅱ)を満たすとき、Vはベクトル空間であるといいます。

以下実数全体の集合をRとします。

(Ⅰ)\forall x,\forall y\in Vに対して、x+y\in Vが定義されていて、

 (ⅰ)(x+y)+z=x+(y+z)

 (ⅱ)x+y=y+x

 (ⅲ)零ベクトルと呼ばれる特別な元oが存在し、\forall x\in Vに対して、

  o+x=xが成り立つ。

 (ⅳ)\forall x\in Vに対して、x+x'=oなるxが存在する。

  このx'xの逆ベクトル(逆元)といい、-xで表す。

(Ⅱ)\forall x\in V\forall a\in Rに対して、ax\in Rが定義されていて、

 (ⅰ)(a+b)x=ax+bx

 (ⅱ)a(x+y)=ax+ay

 (ⅲ)(ab)x=a(bx)

 

以上がベクトル空間の定義になります。(Ⅰ)(Ⅱ)の条件のことをベクトル空間の公理といいます。ベクトル空間は線型空間ともいいます。

要は足し算とスカラー倍(長さを伸ばしたり縮めたりできるということです)が自由にできる空間のことです。(和とスカラー倍に関して閉じている空間とよく言われます)

高校数学までまじめに数学をした方ならベクトルとは矢印のことだと思ってる方も少なくないかもしれません。実際に、平面や空間を考えるうえではそのような解釈でも間違いではありませんが、もっと次元の大きな場合を考えたり、線型代数の理論を用いる場合には上記の定義が必要になってきます。

この定義に基づくと、数列や関数、多項式もベクトルになります。関数をベクトルということに抵抗を持つ方も多いと思います。僕自身もそうでした。しかし、関数をベクトルとみることでフーリエ級数の理論が生まれたりと、何かと都合のいいことが起きたりします。

定義だけを書いても仕方ないので、いくつかの例を見てみましょう。

 

例①

ただ1つの元oからなる集合{o}o+o=oao=oという演算を定義すれば、この集合はベクトル空間になります。ほとんど明らかなので証明は省きます。

 

例②

 実数列の全体はベクトル空間になります。

∵実数列の演算は、\{a_n\}+\{b_n\}=\{a_n+b_n\},c\{a_n\}=\{ca_n\}により定義されます。そのうち収束するもののみを考えると、上記の演算から和とスカラー倍に関して閉じていることがわかります。

 

例③

実数列{x_n}=\{x_1,x_2,,,x_n\}で構成される漸化式

a_1x_1+a_2x_2+...+a_nx_n=0・・・(*)

が成り立つものの全体の集合はベクトル空間になります。

(ⅰ)和に関して閉じていること

(*)を満たす数列\{x_n\},\{y_n\}を任意にとります。このとき、

a_1(x_1+y_1)+a_2(x_2+y_2)+...+a_n(x_n+y_n)

=(a_1x_1+a_2x_2...+a_nx_n)+(a_1y_1+a_2y_2+...+a_ny_n)

=0

(Ⅱ)スカラー倍に関して閉じていること

(*)を満たす数列\{x_n\}を任意にとります。\forall k\in Rに対して、

a_1(kx_1)+a_2(kx_2)+...+a_n(kx_n)

=k(a_1x_1+a_2x_2+...+a_nx_n)

=0

 

例④

例③と同様に次の多項式を満たす全体もベクトル空間になります。

a_1x+a_2x^2+...+a_nx^n=0

 

今日はベクトル空間とはなんぞやということに焦点を当ててみました。次回は、線形写像についてみていきたいと思います。