アマチュア数学者の日記

とある大学で数学を学んでいます。専門は偏微分方程式です。高校野球、マラソン、カメラ、数学、etc...多趣味です。様々なことを書いていきます。

ディラックのデルタ超関数

こんにちは

今日は偏微分方程式を考えるうえで何度も登場するデルタ関数について紹介します。

デルタ関数とは

デルタ関数は超関数と呼ばれるものの一種です。物理では、本来はものすごく狭い(例えば電子のようなものです。ですが、いくら小さくても点ではない) 領域に何かが分布しているが、1点に集中していると理想化することが良くあります

例えば質点 (有限の質量が体積のない1つの点に集中している)、点電荷 (有限の電荷が体積のない1つの点に集中している)などです。これを取り扱えるようにしたものが、ディラックのデルタ(超)関数です。

電荷が原点の近くに分布していて、総量が1であるとします。

その密度を

ρ: R^n → R

とします。すなわち、

\int_{R^n} ρ(x)dx = 1

が成り立ちます。簡単のために

|x| < 1ρ(x) >0,

|x| >1ρ(x) = 0

ε > 0 に対して、ρ_ε(x) :=\frac{1}{ ε^n}ρ(\frac{x}{ ε})

とおくと、 

\int_{R^n} ρ_ε(x) dx = 1,

|x| > ερ_ε(x) = 0

が成り立ちます。

(y =\frac{ x}{ε} と変数変換して、 dy =\frac{ 1}{ε^n}dx となります。)

ε が小さいほど、ρ_εのグラフは細く尖った形になります。全体の量は 1で変わりません。

厳密にはこのような操作は数学的に正しくないのですが、形式的に極限を取ってみると、ε → 0 の極限は、原点1点に集中しているように出来ます。

 δ(x) = lim_{ε→0} ρ_ε(x) 

この右辺の極限を計算すると、

δ(0) = ∞,

δ(x) = 0, (x ≠ 0)

が成り立つから、

\int_{R^n} δ(x)dx = 1 

となりそうなところですが、δ が普通の関数であれば、ほとんど至るところ0なので

\int_{R^n} δ(x)dx = 0

となって、いろいろな矛盾が発生します。何とかうまいことをやって、矛盾なく成り立つように超関数の理論が作られました。

数学の関数の定義からは外れていますが、非常に考える価値が高い「関数っぽいもの」ですのでこれを「『超』関数」と呼び、数学の考察の対象に入れました。

さて、任意の連続関数 f に対して,

lim_{ε→0}\int_{R^n} f(x)ρ_ε(x)dx = f(0)

が成り立ちます。実際、

\int_{R^n}f(x)ρ_ε(x)dx−f(0)

=\int_{R^n} f(x)ρ_ε(x)dxf(0)\int_{R^n} ρ_ε(x)dx

=\int_{R^n} (f(x)−f(0))ρ_ε(x)dx

=\int_{|x|≤ε} (f(x)−f(0))ρ_ε(x)dx

であるから ε → 0 のとき、

\int_{R^n} f(x)ρ_ε(x)dx−f(0)

≦sup_{|x|≤ε}f|(x)−f(0)| \int_{R^n} ρ_ε(x)dx

=sup_{|x|≤ε} |f(x)−f(0)|→ 0

これから

\int_{R^n} f(x)δ(x)dx = f(0)

が期待出来ます。通常は、任意の連続関数 f についてこの式が成り立つものをデルタ超関数 δ と定義するのが一般的です。

以上の議論をまとめたいと思います。

 

まとめ

定義(デルタ超関数)

(-∞,∞)で定義されたδ(x)が、

(1)δ(x)=0

(2)\int_{-∞}^∞ δ(x) dx= 1

(1),(2)を満たすとき、ディラックのδとよびます。