アマチュア数学者の日記

とある大学で数学を学んでいます。専門は偏微分方程式です。高校野球、マラソン、カメラ、数学、etc...多趣味です。様々なことを書いていきます。

熱方程式⑤ノイマン問題の解の一意性

以前から熱方程式の記事について書いています。

以前までは以下の熱方程式を考察の対象にしていました。

(1) \frac{\partial u}{\partial t}(t,x)=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x)

(2)u(t,0)=u(t,1)

(3)u(0,x)=a(x) 

上の(1)~(3)を満たす熱方程式の初期値・境界値問題を熱方程式のディリクレ問題といいます。

今日は、

(1) \frac{\partial u}{\partial t}(t,x)=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x)

(2) \frac{\partial u}{\partial x}(t,0)= \frac{\partial u}{\partial x}(t,1)=0

(3)u(0,x)=a(x) 

上の(1)~(3)を満たす熱方程式を考えることにします。このような初期値・境界値問題のことを熱方程式のノイマン問題といいます。(2)の \frac{\partial u}{\partial x}(t,0)= \frac{\partial u}{\partial x}(t,1)=0は端点x=0,1で熱の出入りがないことを意味しています。

ディリクレ問題の時と同じように、ノイマン問題においても初期値に対して正値保存性が成り立ちます。また、この正値保存性を起点に、解の一意性、安定性が導かれます。それでは見ていきましょう。

 

定理(ノイマン問題の正値保存性)

(1) \frac{\partial u}{\partial t}(t,x)=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x)

(2) \frac{\partial u}{\partial x}(t,0)= \frac{\partial u}{\partial x}(t,1)=0

(3)u(0,x)=a(x) 

a(x)≧0ならば、古典解u=u(t,x)[0,∞)×[0,1]において、

u(t,x)≧0

が成り立つ。

 

証明

Tを任意の正数として、uQ=[0,T]×[0,1]に制限して考え、そこでuが負にならないことを示せば良いです。

εを任意の正の数として、補助関数w

w(t,x)=e^{-t}\{u(t,x)+ε(1-x(1-x)+2t)\}

と定義する。Qにおいてw≧0であることを背理法によって証明します。

そのために、wQにおける負の最小値m(t_0,x_0)で到達したと仮定します。

今、簡単な計算により、Qの内部(0,T]×(0,1)では

 \frac{\partial w}{\partial t}(t_0,x_0)+ w(t_0,x_0) = \frac{\partial^2 w}{\partial x^2}(t_0,x_0)

であることがわかります。

もし(t_0,x_0)Qの内点ならば、その点では

 \frac{\partial w}{\partial t}(t_0,x_0) = 0

\frac{\partial^2 w}{\partial x^2}(t_0,x_0)0

w=m ≦ 0

となり、

 \frac{\partial w}{\partial t}(t_0,x_0)+ w(t_0,x_0) = \frac{\partial^2 w}{\partial x^2}(t_0,x_0)

に矛盾します。

したがって、(t_0,x_0)Qの内点ではありません。

また、t_0≠0であることは、

w(0,x) = a(x) + ε (1-x(1-x))≧  \frac{3ε}{4}

となることからわかります。また、x≠0,1であることは、

\frac{\partial w}{\partial x}(t,0)=-εe^{-t} ≦ 0

からわかります。したがって、WQにおいて負の最小値をとることは不可能であることがわかりました。

以上より、wQにおいて、w(t,x) ≧ 0 でなければならないことがわかりました。

このことから、

u(t,x)+ε(1-x(1-x)+2t) ≧ 0

が得られます。ε→0とすれば、

u(t,x)≧0

となり、証明が完了しました。

 

定理(ノイマン問題の解の一意性)

熱方程式のノイマン問題

(1) \frac{\partial u}{\partial t}(t,x)=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x)

(2) \frac{\partial u}{\partial x}(t,0)= \frac{\partial u}{\partial x}(t,1)=0

(3)u(0,x)=a(x) 

の解は一意である。

 

証明

(1)~(3)を満たす2つの解をu_1,u_2とします。

u=u_1-u_2と定義するとuの満たす条件は、

(1) \frac{\partial u}{\partial t}(t,x)=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x)

(2) \frac{\partial u}{\partial x}(t,0)= \frac{\partial u}{\partial x}(t,1)=0

(3)u(0,x)=u_1(0,x)-u_2(0,x) =a(x)-a(x) =0

となります。すなわち、u(0,x)≧0

このとき、先の定理よりu(t,x)≧0 であることがわかります。

u=u_1-u_2=0

u_1≧u_2

また、u=u_2-u_1として全く同じ論証を行うことにより、

u_2≧u_1

が得られます。

従って、u_1=u_2

以上より熱方程式のノイマン問題の解の一意性が示されました。

 

 

ディリクレ問題の時と同じように補助関数を用いて、正値正(最大値の原理)が導かれ、その系として一意性が導出されます。