アマチュア数学者の日記

とある大学で数学を学んでいます。専門は偏微分方程式です。高校野球、マラソン、カメラ、数学、etc...多趣味です。様々なことを書いていきます。

熱方程式②最大値の原理からわかること

前回に引き続き、熱方程式についてです。

前回の記事はこちら

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実は最大値の原理から解の一意性や保存性が導かれます。前回の定義・定理のステートメントを引用しておきます。

定義①

任意の正の数Tに対して、

Q = [0,T]×[0,1]

Γ = \{(0,x);0 ≤ x ≤ 1\}\cup \{(t,x);x=0,1\},

Q^o = Q\backslash Γ

とします。uが熱方程式  \frac{\partial u}{\partial t}(t,x)=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x) の古典解であるとは以下の(1)~(3)満たすことをいいます。

(1) uQ= [0,T]×[0,1] で連続。

(2)  \frac{\partial u}{\partial t}(t,x),\frac{\partial u}{\partial x}(t,x),\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x), は Q^o = (0,1)×(0,T] で存在し、連続。

(3) Q^o \frac{\partial u}{\partial t}(t,x)=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x) が成り立つ。

 

次に熱方程式を具体的な形で定義しておきましょう。今回は簡単のために以下のように定義することにします。

 

定義②(熱方程式の初期値・境界値問題)

(1) \frac{\partial u}{\partial t}(t,x)=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(t,x)

(2)u(t,0)=u(t,1)

(3)u(0,x)=a(x) 

 

定理(熱方程式の最大値・最小値の原理)

v = v(t,x) が、熱方程 式の Q^o における古典解ならば、

\max_{(t,x)\in Q}v(t,x) =\max_{(t,x)\in Γ }v(t,x)

\min_{(t,x)\in Q}v(t,x) =\min_{(t,x)\in Γ }v(t,x)

 

 これらの最大値・最小値の原理から系として以下のことが導かれます。

系(順序保存性)

u_1,u_2がともにQにおける熱方程式の古典解で、Γu_1 ≥ u_2をみたすならば、Q上でu_1 ≥ w_2

※この系の主張は境界で熱の温度の大小関係があった場合、内部においても連続的に大小関係が引き継がれるということです。

証明

u=u_1-u_2とおけば、uQ上の熱方程式の古典解になります。

最大値の原理から、

\min_{(t,x)\in Q}u(t,x) =\min_{(t,x)\in Γ}u(t,x)

が成り立ちます。

今、仮定よりΓ上でu≧0なので、

\min_{(t,x)\in Γ}u(t,x) ≧0

\min_{(t,x)\in Q}u(t,x) ≧0

以上よりQ上でu_1≧u_2

 

系(正値保存性)

Vが熱方程式の古典解でΓv≧0を満たすならばQ上でv≧0となる。

※この系の主張は境界で温度が正ならば、内部でも温度は正になるということです。すなわち、境界の情報が内部にも遺伝するということです。

証明

最大値の原理から

\min_{(t,x)\in Q} v(t,x)= min_{(t,x)\in Γ} v(t,x)≧0

よって、Qv≧0

 

系(解の一意性)

熱方程式の初期値・境界値問題の解は一意である。

証明

定義②の熱方程式及び各条件を満足する任意の2つの古典解をu_1,u_2と置きます。

u=u_1-u_2を考えることにします。

u(t,0)=u_1(t,0)-u_2(t,0)=0

u(t,1)=u_1(t,1)-u_2(t,1)=0

u(0,x)=u_1(0,x)-u_2(0,x)

        =a(x)-a(x)=0

以上によりΓ上ではu=0となることがわかりました。

最大値の原理から

\max_{(t,x)\in Q}v(t,x) =\max_{(t,x)\in Γ }v(t,x)

\min_{(t,x)\in Q}v(t,x) =\min_{(t,x)\in Γ }v(t,x)

なので、Q上でもu=0

u=u_1-u_2=0

u_1=u_2

以上により解の一意性が示されました。

※物理現象が確かに存在しているので、解は確実に存在して、ただ1つじゃないかという意見もあるようですが、数学ではその立場は許されません。物理ではありかもしれませんが。

このように最大値の原理は熱方程式の理論において豊かな話題を提供してくれています。次回は熱方程式の解の安定性や初期値に対する依存性についてみていきたいと思います。