アマチュア数学者の日記

とある大学で数学を学んでいます。専門は偏微分方程式です。高校野球、マラソン、カメラ、数学、etc...多趣味です。様々なことを書いていきます。

距離について

こんばんは 

今日は「距離」についてです。

先日「位相」についての記事で位相とは「距離を抽象化したものである」ということを書きました。しかし肝心な距離について書いていなかったので今日は距離の数学的な定義づけと例を見ていきたいと思います。

位相についての投稿はこちら

www.ruhamata.work

数学における距離と私たちが普段耳にする距離というものの概念は大きくかけ離れるものではありません。A地点からB地点への距離は何キロといった感じで数学でもある点からある点の距離を代数的な計算によって求めます。

たとえば一次元の数直線の場合を考えると1と5の距離は4となります。距離をdとして定式化すると

d=|5-1|=4

といったところでしょうか。上記の例から数直線上の二点の距離は差の絶対値によって求めることができます。(この距離を一次元のユークリッド距離といいます。)

もう一つの例を見てみましょう。(2,3)(6,6)の二点の距離を求めます。これも距離をdとしましょう。(distanceの頭文字をとって距離をdとすることが一般的です。)

d=\sqrt{(2-6)^2+(3-6)^2}

=\sqrt{4^2+3^2}

=\sqrt{16+9}

=\sqrt{25}=5

という感じで二点の距離が5であることがわかります。中学3年で学習した三平方の定理により求めることができました。(この距離を二次元ユークリッド距離といいます。)

以上の例に見るユークリッド距離というのは私たちになじみ深い距離です。中学、高校で学習してきた距離で距離の入門に当たる距離といってよいでしょう。しかし、私たちはA地点とB地点の距離を考える際に2点間を直線で結び、その直線距離を考えるといったことを日常生活でどれくらい行う機会があるでしょうか。たいていの場合、そこに行くまでの道のりの距離を考えるのではないでしょうか。数学を考えるうえでも同じで必ずしも直線距離を考えることが最善とは限らないのです。また、上記のユークリッド距離は計算する際にルートを考える必要が出てきます。距離の最小値を求めたくなった場合には微分をする必要が出てきます。計算が複雑になることが予想されるわけです。そこで発想を変えて、距離はこの形をしている必要はないのではないか、距離には共通する性質がありそれを満たすものをすべて距離と呼んでもよいのではいか、ということで、数学に携わる人々は距離が満たすべき性質を考えだしたのです。その結果距離とは以下の3つを満たすものであることがわかりました。

d(x,y)=0特にd(x,x)=0

d(x,y)=d(y,x)

d(x,y)+d(y,z)≧d(x,z)

d(x,y)とは2点x,yの距離のことです。

①から解説していきましょう。①は2点x,yの距離は非負であるという主張です。ある場所とある場所の距離は絶対に0以上であるという事実は私たちの直感に沿うものです。後半はxxの距離は0という主張です。自分と自分の距離が0というのも当たり前に感じるところでしょう。

②について解説します。2点xyの距離と2点yxの距離が同じになるという主張です。私から見たとあなたの距離とあなたから見た私の距離は同じという意味です。(こういう言い方をすると何か意味深ですね笑)これも私たちの直感に沿うものでしょう。

③について。この不等式は三角不等式と呼ばれています。3点x,y,zを考えます。xyの距離とyzの距離の和がxzの距離を超えることはないという主張です。これはそんなに明らかではないので図を見てほしいのですがうまい図が書けないのでWikipediaを参照して欲しいです。

ja.wikipedia.org

このような性質を満たすものを距離と呼ぶことになったのです。大げさに言うならばこのような性質を満たしさえすればなんでも「距離」になってしまうのです。この距離の性質のことを「距離の公理」と呼びます。またd(x,y)のことを距離関数といいます。そしてある集合に以上の公理を満たす距離関係を入れた空間のことを距離空間といいます。(一般に数学では集合に何か関係を入れたものことを空間といいます。)

ここからは距離の例を見てみましょう。

例①

x=(x_1,x_2,,,,x_n)

y=(y_1,y_2,,,,y_n)

x,yR^n上のベクトル空間の元だとします。

d(x,y)=max|x_i-y_i| (i=1,2,,,n)

このようにd(X,Y)を定義するとこれは距離空間の公理を満たしています。この距離はX,Yのベクトルの各成分の差の最大値を距離とするような距離です。すなわちベクトルには様々な方向があってその中で最も離れている場所を2点間の距離として採用してしまおうというモチベーションです。

例②(ハミングの距離)

情報科学やコンピュータで用いられる距離です。この距離はある文字列の誤差の数を表す距離です。誤差の数がそのまま距離になります。説明が難しいので実際の例を見てみましょう。

正しい文字列「あいうえお」

誤った文字列「あきうせお」

左から2番目は正しくは「い」ですが誤って「き」、4番目は正しくは「え」ですが「せ」となっているので誤字数は2です。よって「あいうえお」と「あきうせお」の距離は2となります。正しい文字列との誤差を測るための距離として人工知能等の開発に使われているようです。

今日は距離についてでした。くどいようですが距離の自然な拡張として位相があるという意識で数学を考えるとわかりやすいかと思います。